サトウコウタ展『小さな灰色の脳細胞』作品紹介(5)/江戸川乱歩と横溝正史

ようやく最終回。
展示作品に付けたキャプションから、本の背表紙などに書かれている文から引用した”あらすじ”と、僕自身の感想である”作品について”も紹介しています。


『屋根裏の散歩者(探偵:明智小五郎)/江戸川乱歩』

あらすじ
下宿屋東栄館の屋根裏を歩きまわるのはだれか?それは犯罪嗜好癖をもつぶ気味に男・郷田三郎であった。かれは天井裏の小さな節穴から毒薬を落とし、下に寝ていた同宿者のひとりを殺した。自殺としてかたづけられようとしたこの事件を、郷田三郎が犯した奇妙な犯罪と見破った明敏な推理力の持ち主こそ、素人名探偵・明智小五郎であった。


作品について
江戸川乱歩とはエドガー・アラン・ポーのもじりであり、乱歩はポーを敬愛するあまり自分のペンネームにしてしまいました。犯人の心理描写から導入する作風にポーの倒叙ミステリーの影響が見られます。犯人が犯行に及ぶまでの心理を中心に、突然現れた探偵・明智小五郎との頭脳と心理合戦。結末は明智の勝ちと分かってはいても、いつの間にか犯人に愛着を持ってしまっている人間の心情の不思議さに複雑な気分です。





『犬神家の一族(探偵:金田一耕助)/横溝正史』

あらすじ
信州財界一の巨頭、犬神財閥の創始者犬神佐兵衛は、血で血を洗う葛藤を予期したかのような条件を課した遺言状を残して永眠した。佐兵衛は生涯正室を持たず、女ばかり三人の子があったが、それぞれ生母を異にしていた。一族の不吉な争いを予期し、金田一耕助に協力を要請していた顧問弁護士事務所の若林がやがて何者かに殺害される。だが、これは次々と起こる連続殺人事件の発端にすぎなかった!血の系譜をめぐる悲劇、日本の推理小説史上の不朽の名作!!


作品について
推理小説で泣く、というのは始めての経験でした。この作品の舞台は、いつも薄暗く霧深い山荘で、常に憎念が渦巻いた犬神家の親族の間にあった、ラストに歪んでいても深い愛の一片が見えたとき、突然涙が溢れてきたのでした。 映画は市川崑監督によって幾度か映画化されており、このミステリアスでアブノーマルな世界に挑戦したくなる気持ちはよくわかります。イラストは犬神家の家宝「斧・琴・菊」。





『屋根裏の散歩者』は何故か男性の方から特に評価が高かったです。持ち込みで見てもらう先でも男性の担当さんからは特に評価をいただくことが多いです。
『犬神家の一族』はとにかく未読の方には読んでほしい一冊です。読めばわかる!




さて、ずいぶん間をあけての作品紹介になってしまいましたが、これで完結です。
今更ですが、改めまして展示にいらして下さった皆様、本当にありがとうございました。
ご無沙汰だった人、最近知り合った人なども足を運んで下さって、とても嬉しかったです。
またの機会に新作を見ていただければ幸いです。

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