サトウコウタ展『小さな灰色の脳細胞』作品紹介(4)/ヴァン=ダインとコナン・ドイル

だいぶ間が空いちゃいましたが、個展の作品紹介、続けます。
展示作品に付けたキャプションから、本の背表紙などに書かれている文から引用した”あらすじ”と、僕自身の感想である”作品について”も紹介しています。

『グリーン家殺人事件(探偵:ファイロ・ヴァンス)/S・S・ヴァン=ダイン』

あらすじ
ニューヨークの街中で、絶えずいがみ合い反目し合っている5人の子供達が住む古邸グリーン家。ある夜、そのグリーン家で2人の娘が何者かによって銃撃される。この事件を皮切りに、一家の皆殺しを企てる姿なき殺人者が跳梁する。


作品について
この時代の推理小説の動機は大抵、財産や妬み、恨み、敵討ちがほとんどですが、この事件の犯人は決定的に心の飢えた人間として登場します。そんな欠けた心を持った犯人像には、無欠の名探偵とは違う深い魅力があります。 一方探偵のヴァンスは、財産、容姿、頭脳にまで恵まれ、恵まれすぎて堕落しかけているというダメ人間ぷりで犯人に負けていません。しかし本書一番の見所は訳者の坂下昇先生の江戸っ子なセリフ回しでした。「へえ、あっしでござんす。」





『恐怖の谷(探偵:シャーロック・ホームズ)/アーサー・コナン・ドイル』

あらすじ
シャーロック・ホームズ最後の長編は、彼の最大の敵、悪の天才モリアーティ教授との喰うか喰われるかの死闘であった。イングランドの山村に起きた殺人事件は、アメリカ開拓時代の過去にさかのぼって、悪の集団のおそるべき正体を暴露する! ドイル十八番の伝奇的要素を豊富にもりこんだ本書は、すさまじい迫力で読者をひきずりこむのだ。


作品について
ホームズ永遠のライバル、モリアーティ教授との因縁が結びつけた事件。モリアーティ自身は出てきませんが、彼の組織の影響が如何に強大で根深い影を世界に落としているか、この背景の作り込みが素晴らしいです。 二部構成で後編の恐怖の谷を、ジョンフォードの「我が谷は緑なりき」の炭坑村、フレデリック・バックの「木を植えた男」の荒んだ村をミックスしてイメージしてみました。





ヴァンスとホームズは、頭脳、容姿、肉体、そして社会的地位や経済に置いても非の打ち所の無い人間として登場します。 「グリーン家〜」のキャプションにも書きましたが、この二人、事件が無いと鬱になって寝込んでしまったり、無気力で人生に失望してしまったりするという、ちょっとおかしな人たちです。
ワトソンに至っては「痛々しくて見ていられない」というようなことまで言っています。天才故の苦悩というやつでしょうか。




次回は最終回。江戸川乱歩と横溝正史です。

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